川端康成学会 第174回例会
日時 4月21日(土)14:00より総会、その後研究発表
場所 鶴見大学 1号館401教室
*平成30年度総会 事業報告・会計決算報告・事業計画案・会計予算案・役員改選
*研究発表
「『浅草紅団』と『上海』の比較―川端康成の方法」
熊本大学大学院社会文化科学研究科博士後期課程 彭 柯然
「川端文学における〈偶然〉性」
日本大学非常勤講師 姜 惠彬
*閉会の辞
川端康成学会会長 林 武志
司会 山田 吉郎
*当日、14時より平成30年度総会を開催いたします。終了後、研究発表に移ります。
*当日受付にて、参加費500円を頂きます。ご了承ください。
*当日受付にて、年会費の納入をお受けします。併せて、維持会費もよろしくお願いいたします。
*例会終了後、懇親会を予定しております。奮ってご参加ください。
*当日、12時より1号館406教室にて理事会総会(理事会と合同)を開催いたします。常任理事・特任理事の皆様はお集まりください。
*今後の例大会の開催予定日をお知らせいたします。第45回大会は6月24日(日)、もしくは7月8日(日)を予定しております。第175回例会は8月25日(土)、第176回例会は12月15日(土)を予定しております。
上記の日程は変更になる場合もございますので、ご了承ください。
なお、例会での研究発表希望者を随時募集しております。ご希望の方は事務局長・佐藤翔哉(shoyasato.kawa@gmail.com)までご一報いただけましたら幸いです。
*会員の皆様には「年報」30号(2015年)までのバックナンバーを送料込み1部500円で販売致します。最新号と前号は会員価格2,000円で販売致します。なお、在庫切れの号もありますので、詳細は事務局長・佐藤翔哉(shoyasato.kawa@gmail.com)まで、お問い合わせ下さい。
*例会についてのお問い合わせは下記にお願いいたします。
〒422-8529 静岡市駿河区大谷836 静岡大学人文社会科学部言語文化学科 田村充正研究室
【発表要旨】
*彭柯然(熊本大学大学院社会文化科学研究科博士後期課程)
「『浅草紅団』と『上海』の比較―川端康成の方法」」
川端康成の『浅草紅団』(1929)は発表当時に都市風俗小説として読まれており、そのことから、都市論という観点から取り上げる論考は盛んに行われてきた。また、作品における映画的な要素や語り手を分析する論も多く見られる。近年、『浅草紅団』の発表の場となった『東京朝日新聞』における太田三郎の挿絵へ関心が高まり、挿絵と新聞小説の相互作用から新たな読みの可能性が提出されつつある。以上の膨大な先行研究の中で、同時期に発表された横光利一の『上海』(1928)との比較研究は少ない。『上海』と『浅草紅団』はプロレタリア文学へのある種の対抗意識の下に執筆されたと考えられるため、反プロレタリア文学という特性が色濃く反映される。しかし、『上海』における徹底的な反プロレタリア文学的な性格と異なり、『浅草紅団』においては、プロレタリア文学から継承されるものがあると考えられる。また、「文字」を作者・読者から切り離して自立した「物体」として捉えようとする横光の考え方と、語る主体と語られる客体を未分離のままに混在している『浅草紅団』の方法とは明らかに違うのである。本発表では、両テクストの同一性と差異を検討しながら、同時期の川端の評論を参考にすることによって、『浅草紅団』の創作方法を明らかにしたい。
*姜惠彬(日本大学非常勤講師)
「川端文学における〈偶然〉性」
川端康成の「散りぬるを」(昭和8・11~昭和9・5)は、完全な「偶然」の死を再現しようとする小説家の「私」の苦闘を通じて、「偶然」的な人間の存在と、「必然」的な筋立からなる小説世界との齟齬関係を主題化している。さらに「私」の語りが、結局作られたものとして提示され、小説全体に渡ってプロットの乱れが生じている。しかし、その乱れは、「私」の語り自体が相対化される時点で、すでに計画されていたと見るのが妥当であろう。本発表では、かかる本作の語りを、昭和初期における〈詩的〉小説と〈偶然〉の問題の中で考察する。小説の〈偶然〉性は、〈描写〉の限界を克服しようとしている点で、小説が〈詩〉的に化し、新たな語りを獲得する射程と連動していると考えられる。