第191回例会案内

川端康成学会 第191回例会 
日時 2024年 12月21日(土)14:00より
場所 鶴見大学 1号館5階501教室

*研究発表
「川端康成『伊豆の踊子』論」(kawabata in the dark 闇の中の川端康成、もしくは川端康成の中の闇 )
冨田陽一郎(日本大学豊山高等学校 非常勤講師)

「昭和十三年六月札幌文化講演会がもたらしたもの 」
            吉田秀樹(川端康成学会 常任理事)

閉会の辞                         片山倫太郎


*新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類感染症に移行しましたが、オンラインでの参加形態はしばらくの間、維持したいと思います。オンラインで参加される方は、各自で参加できる環境を整えておいてください。URL、ID、パスワードは後日配信いたしますので、連絡可能なメールアドレスを事務局長・青木言葉(kawabatagakkai@gmail.com)までお知らせください。

*当日受付にて、参加費500円を頂きます。ご了承ください。

*当日受付にて、年会費の納入をお受けします。併せて、維持会費もよろしくお願いいたします。

*当日、12時半より1号館5階509教室にて理事会を対面とオンラインにて開催いたします。常任理事の皆様はお集まりください。

*例会での研究発表希望者を随時募集しております。ご希望の方は事務局長・青木言葉(kawabatagakkai@gmail.com)までご一報いただけましたら幸いです。

*会員の皆様には「年報」37号(2022年)までのバックナンバーを送料込み1部500円で販売致します。最新号と前号は会員価格2,000円で販売致します。なお、在庫切れの号もありますので、詳細は事務局長・青木言葉(kawabatagakkai@gmail.com)まで、お問い合わせ下さい。

*例会についてのお問い合わせは下記にお願いいたします。

川端康成学会事務局

〒230-8501 横浜市鶴見区鶴見2-1-3 鶴見大学6号館 鶴見大学文学部片山倫太郎研究室

メール:kawabatagakkai@gmail.com


【発表要旨】

*冨田陽一郎「川端康成『伊豆の踊子』論」(kawabata in the dark 闇の中の川端康成、もしくは川端康成の中の闇 )
 この作品は、一高生の20歳の若い男性という「まなざす主体」と、14歳の若い踊り子の女性という「まなざされる客体」が分離しているが、淡い恋愛によりこれがほんの一瞬交錯し、また、この異性愛という祝祭空間から、最初に所属していたホモソーシャルな男性集団に回帰し、少年と一体化するという、異界探訪譚と青春の恋愛の混在した場面を描いた作品と、発表者は捉える。
 ここに、半島(伊豆半島)という被差別空間、トポス、被差別(「孤児根性」「物乞い旅芸人村に入るべからず」)や女性蔑視(ミソジェニー)(「女の後は汚いだろう」「女が箸を入れて汚い」)そして性搾取のまなざし、ドストエフスキー『罪と罰』のソーニャと同じ(生娘(「生娘なんだからね」)で娼婦(旅芸人))である点、「非人(特殊芸能民・山水河原者)」である重い旅芸人の娘の業、自我(「それはあなたの思っているより重いわ。」)などをちりばめ、さらにこの半島という被差別地域・トポスに入るにあたって、「峠」や「トンネル」などの結界通過をうまく盛り込み、あたかも千本稲荷のように、トランスさせていく手法(平行異界)などが盛り込まれ、処女でありながらも手練れの娼婦のようなこの川端康成の作品の背景に、著者自身の非人(特殊芸能民・山水河原者)性(闇)を見る試みである。
 本発表では、川端康成の少年期に立ち戻り、日記、書簡をはじめとする資料を改めて考察することにより、上京前後の川端康成の言動に憑依し続ける「家」の問題を照射することを目的とする。まず、個人の内面として処理された川端康成の「孤児」の言説を、「家」との関係性の中において再検討し、作家の主体性の形成に寄与していた「家」の特徴を浮き彫りにする。次に、川端康成の言語観の中核を担う「遺産」という概念を注目し、「遺産」の内実が「家」の影響によって生まれたことを、彼の評論への精査を通じて解明し、「新感覚派」の一員として活躍していた川端康成の諸活動を解釈する新たな視点を提示する。以上の考察を踏まえ、「ちよ」(一九一九・六)という初期創作を取り上げて分析を行う。さらに、一九二〇年代以降の小説作品に織り込まれた「家」のモチーフについて指摘し、伝記研究とモダニズム研究によって二分化されてしまった川端康成の初期活動における連続性を取り出すことを試みる。

*吉田秀樹「 昭和十三年六月札幌文化講演会がもたらしたもの」
 表題の文化講演会とは1938昭和十三年六月十八日、北海道帝国大学新聞部と婦人公論読者グループ白雪会との共催によるものを指す。北海道帝大新聞部は二百号記念として式場隆三郎を、白雪会は横光川端を招いて講演会を企画していたが、開催時期が重なるところから共催となった。見方によっては一地方の寄せもの的な講演に過ぎないようでありながら、式場に於いてはアイヌ書誌を編む機縁となり(「北の旅」『民藝』昭17・10)、川端に於いては創作の土台作りと引き金になった側面がある。この講演会を手掛かりに式場と川端に焦点を合わせ、そこから割り出せる問題と視角から「母の読める」「母の初恋」に照明を当て、昭和十年代中期の川端の活動の一端に触れたい。実見頻度の少ない川端の資料は閲覧の便宜を図ってごく少数レジメに載せたが、贅言ながら、良心的配慮に基づいて再利用は控えていただくようお願いしたい。

事務局