【最新】第189回例会

日時 12月 16 日(土)14:00 より
場所 鶴見大学 5号館 2 階 201 教室
研究発表
*王鑫鑫(筑波大学人文社会ビジネス科学学術院・人文社会科学研究群・国際
本研究学位プログラム博士後期課程)
「川端康成の作品における「孤児根性」に関する研究 ―主に「油」を中心に
―」
*樋口康一郎(東葛西中学校教員)
「震災後文学としての「浅草紅団」――復興・モダニズム・トラウマ」
閉会の辞 片山倫太郎


*新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類感染症に移行しましたが、オンラインでの参加形態はしばらくの間、維持したいと思います。オンラインで参加される方は、各自で参加できる環境を整えておいてください。URL、ID、パスワードは後日配信いたしますので、連絡可能なメールアドレスを事務局長・内田裕太(kawabatagakkai@gmail.com)までお知らせください。
*当日受付にて、参加費500円を頂きます。ご了承ください。
*当日受付にて、年会費の納入をお受けします。併せて、維持会費もよろしくお願いいたします。
*当日、12時より5号館2階202教室にて理事会を対面とオンラインにて開催いたします。常任理事の皆様はお集まりください。
* 例 会 で の 研 究 発 表 希 望 者 を 随 時 募 集 し て お り ま す 。 ご 希 望 の 方 は 事 務 局 長 ・ 内 田 裕 太(kawabatagakkai@gmail.com)までご一報いただけましたら幸いです。
*会員の皆様には「年報」36号(2021年)までのバックナンバーを送料込み1部500 円で販売致します。最新号
と前号は会員価格2,000円で販売致します。なお、在庫切れの号もありますので、詳細は事務局長・内田裕太(kawabatagakkai@gmail.com)まで、お問い合わせ下さい。
*例会についてのお問い合わせは下記にお願いいたします。
川端康成学会事務局
〒230-8501 横浜市鶴見区鶴見2-1-3 鶴見大学6 号館 鶴見大学文学部片山倫太郎研究室
メール:kawabatagakkai@gmail.com


【発表要旨】
*王鑫鑫「川端康成の作品における「孤児根性」に関する研究 ―主に「油」を中心に―」
川端康成の作品における「孤児根性」は、主に二つの実体があり、「大黒像と駕籠」(大正十五年)、「伊豆の踊子」(大正十五年)における他人の好意を素直に受け入れられない性質で、「油」(大正十年)における孤児の悲哀を素直に受け入れられない性質である。
 本発表では、川端康成の作品「油」を中心に、「私」の父母に関する記憶、記憶と感情との関連性、父母への感情と孤児の悲哀との区別、過度の反省をめぐり作品の分析を行う。主人公「私」における「孤児根性」がどのように生まれたのか、その過程でどの節に何の問題が生じたのかということは本発表の研究目的とする。その問題の生じた原因を分析してから本発表の研究意義を検討したい。
 また、川端の作品においては、ダダイズムの影響を受け、「孤児」の原体験、「孤児根性」の性質を克服していたのではないかと発表者は思うのである。「伊豆の踊子」という作品と繋がり、「孤児根性」がどこかに隠されたのかということを究明し、新しい課題とする。

*樋口康一郎「震災後文学としての「浅草紅団」――復興・モダニズム・トラウマ」
 「浅草紅団」は、関東大震災後の東京の「復興」をめぐる状況や言説が書き込まれており、「昭和三年二月復興局建造の言問橋」や隅田公園など、震災後に「復興」の中心となり、モダンな都市としてった浅草を舞台とする一方で、「私は地震の娘です」と語る弓子において、被災者としての傷跡が生々しく語られるなど、「復興」をめぐる矛盾や亀裂が語られていくテクストである。
 副田賢二が、「浅草紅団」をめぐって―「復興の東京」と「女」たち」(「昭和文学研究」二〇〇四)において、「「浅草紅団」は、震災以降の東京における「復興」のコンテクストと共起的なテクストであると考えられる。」として論じているように、これまでにも「浅草紅団」における「復興」の文脈は論じられてきたが、 東日本大震災から十年以上が経過し、北条裕子「美しい顔」(2019)、- 石沢麻依「貝に続く場所にて」(2021)、佐藤厚志「荒地の家族」(2022)など、震災を題材とした文学が注目を集めている現在において、東日本大震災を経たことによって見えてきた「浅草紅団」における震災後文学としての様相を、同時代の言説や表象と照らし合わせつつ再検討する。

事務局