第183回例会

【発表要旨】
*辻秀平(関西大学大学院文学研究科総合人文学専攻 博士後期課程)
「川端康成『再婚者』論―「池上先生」の〈遺志〉をめぐって―」 
 川端康成の中篇『再婚者』(『新潮』昭和23年~27年)は、語り手「私」の妻「時子」と、「時子」の亡き先夫「池上先生」との間の娘「房子」の結婚をめぐる、家族間の微妙な心理の綾を描いている。川端は「獨影自命(十三)」で、「死者を歌つた」詩に着想を得たと述べているが、これは死者の「不気味な沈黙」が生者に与える力をうたった仏作家ジュール・シュペルヴィエルの詩「ありがたち」(『ヨーロッパ』昭和22年12月)だと想定される。当時知己を相次いで亡くしていた川端は、沈黙する死者の意味付けを文学的課題の一つとしており、「ありがたち」はそうした川端にとって示唆的だったはずである。
 『再婚者』の要諦は、死者の遺言や過去の日記に表出された〈遺志〉を、生者が解釈することで人間関係に不和が生じている点にあり、ここに「ありがたち」の影響が窺える。本発表では『再婚者』執筆前後の川端の意識や「ありがたち」をめぐる問題を踏まえつつ、作中で描かれている、〈遺志〉を解釈する生者の営みが有する意味を検討したい。

*片山倫太郎(鶴見大学)
「鶴見大学附属図書館所蔵の川端康成自筆資料数点」
 今回の会場校である鶴見大学の附属図書館は、数は少ないながら、川端康成の原稿・書簡類を所蔵しています。未発表原稿「勤王の神」(推定昭和3年執筆)、『東京の人』(昭和30年8月11日掲載部分)、『千羽鶴』のドイツ語訳の際にやりとりされた書簡類(昭和30~33年)、その他数点の書簡です。すでに翻刻、考察済なのですが、よい機会なので皆様にご覧いただければと考えております。ただし、ハイブリッド開催ですので、写真等を用いた説明が主になり、直接ご覧いただけるのは会場参加者のみとなります。どうぞご容赦ください。
 

【会 場】鶴見大学1号館4階401教室(〒230-8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2―1−3)
【アクセス】 JR京浜東北線 鶴見駅西口下車徒歩5分、京浜急行 京急鶴見駅下車徒歩7分

PDF版例会案内 (kawabatayasunari-academy.org)

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